ある年の3月、僕はドイツのハノーバーにいた。
ホテル滞在の2日目の朝、その日はまだ寒い朝
仕事には時間があるので、街を観て回ろうと散歩に出かけた。
呼吸をすると息はまだ白い煙のように・・・・。
3ブロックか4ブロック歩いただろうか、ショーウィンドウのシャッターが半開きになっている。
その半分開いたガラス越しに何かの囁きが聞こえたような気がした。
そこには数体の操り人形(Marionetten)がいた。
じっと覗きこむと、その操り糸を付けた人形はじっと外を観ている。
その愛らしいというか、ちょっと悲しげな顔にすごく 興味を惹かれた。
しばらくの間、その人形達に見入ったあとに、 また散歩を続けようと石畳の歩道を歩きはじめようとしたら、 「待って」 という声が頭の中でかすかに響いた。
振り向いてもまだ早いせいか、人気の無い歩道に枯れ葉が風にすれる音がしている。